工房との出会い

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前回はレザークラフトとの出会いを書きましたが、今日は私がどのようにしてベルリンでこの世界に入ったかということをシェアしたいと思います。

2013年6月にワーホリビザでベルリン入りしたものの、初のEUそして、これまでアメリカやオーストラリアの人や文化との関わりの方が圧倒的に多かった私にとって、ベルリンでの最初の1カ月は人生初のカルチャーショックと、これまた人生初のホームシックの日々でした。

そんな状態だったので、1カ月も経たないうちに、さっさと旅だけして寒くなる前に日本に帰ろう!と決めて、早々に旅のアレンジ+帰国便のチケットまで取ってしまいました。しかしベルリンを離れてみたら心変わりし、急きょ帰国のフライトを変更し、ベルリンに戻ることにしました。

ベルリンに帰っては来たものの、帰国する気満々だったため、1カ月半の旅にほぼ全財産をつぎこんでしまったため、とにかく仕事を探さなければここにはいられないと思い、ドイツ語もままならないため、あまり語学力を重視されないホテルのハウスキーパーなど暫くは町中のホテルなどに履歴書を配り歩く日々でした。

そんな時、たまたまフラットメイトが英語ができるならここ受けてみれば?とカスタマーサービスの求人を紹介してくれ、せっかくもらった情報だし、というノリで受けた会社に就職が決まり、なんと正社員で1年の契約をもらえたのでワークビザに切り替え、約8カ月ほどでしたが会社員として生活し、貯金をすることができました。

海外で外資系企業で仕事をするということを身をもって体験することができたことは本当に私にとって大きな財産となりましたが、何せ自分のやりたいこと、好きなこと、興味のないことにはとにかくエネルギーを注ぎ込めない典型的な双子座なので、色々と悩みはしましたが8カ月で退職し、私が本当にやりたいこと、やるべきことに向き合う事にしました。

8カ月の会社員生活についてはまたの機会に詳しく書きたいと思いますが、とにかく日々のストレスがひどく、どうにかしてリフレッシュできないものかと考えた時に、日本で趣味でやっていたレザークラフトをやりたい!と思い、母に道具を送ってもらいました。

退職後、レザーで何か作って販売できないか、いや、その前にベルリンに工房があればそこで勉強できないか・・・などと色々考えていましたが、飛び込みで修行させてもらうにしても、何か自分の手で作ったものがあったらいいのでは・・・?と思い、レザーの材料探しを始めました。しかし、マーケットなどでは裁縫道具や布は販売しているものの、さすがに革はなかなか見つからず、インターネットで検索して見つけた住所に行ってみてもすでにその場所には別の物件が入っていたり・・・と空振りが続きました。

何軒か私好みのバックや財布等を販売しているお店を見つけては履歴書と今まで自分で作った物の写真を持って、お店の人に革の仕入先や工房の有無を聞いたり、はたまたインターンシップの可能性がないか聞いて回っていました。

そんなある日、たまたま買い物がてら街を歩いているときにふと、そういえばこの辺にもレザーグッズの店があったような・・・と思いHackesche Hofという観光スポットの中にあるお店(Hoffnung Berlin)に入ってみるとそこはオーダーメイドのベルト専門店でした。

私「革の素材を探してるんだけど、どこから仕入れているんですか?」

と尋ねたところ、

店員「うちの工房に行けば買えると思うから行ってみれば?」と!!

工房がある!と思った私は

「工房ってインターンとか受け入れてます?」

店員「受け入れてるときもあるから聞いてみたらいいよー!」と!!!

早速その日に、工房に電話をかけ、アポを取って尋ねたところ、オーナーが出迎えてくれ、工房内を案内し、どのような工程で一枚革からベルトができるのかを見せてくれました。

彼はちょうど私の父親世代で、なんと私が生まれた年にこの会社を立ち上げ、それ以前は独学でレザークラフトを学んでここまできたとのこと。

工房内のオフィスには彼が初めて作った厳ついベルトが飾られ、創業当時の写真を見せながら色々語ってくれました。

そして、私もレザークラフトが好きでこれから本格的に学びたいと思っていること、これまで自分が趣味で作ってきた物の写真を見せ、これからまた作り始めたいため、素材を探していること、インターンとして勉強させてもらえないかということを話ました。

するとオーナーは

「レザークラフトは専門の学校というものがほとんどない(ドイツでは)からね、やりたい人は現場に入って学ぶしかないんだよ。僕もそうやってここまできたから。やりたいなら、ここで勉強していいよ!それから、革ドイツではなかな素材を売ってないし、端切れならここから持って行きなさい。」

という願ったりかなったりの返答!!!!

その時の私は嬉しくて興奮して心ここにあらずといった状態でしたが、これまで趣味で(でもずっと革職人として生活できたら夢のようだな・・・と思っていましたが)続けてきただけのすでに30代の、しかもドイツ語もままならない私にこんなにもあっさりと勉強の場を与えてくれた彼のオープンな姿勢に脱帽しました。

それから数か月、ほぼ毎日、インターンとして(もちろん無給で)工房の仕事を手伝わせてもらい、その間に、ワークビザからフリーランスビザに切り替えることを決意し、数か月経過したころに、オーナーにビザ取得のためここでアシスタントして数か月働いたことなどを証明する書類を出してほしい旨伝えたところ、ちょうどクリスマス前の繁忙期に入るため、これからバイトとして雇うというオファーも頂けました。

ベルリンという土地柄はもちろん、オーナーもやる気のある人に寛容でチャンスを与えてくれる人と出会えたこと、そして毎日仕事に行くことが本当に楽しみで、仕事をしていてこんなに幸福感を得られる場所にいられることに感謝です。

お店の名前でもあるHofffnungとはドイツ語でHope(希望)という意味、まさに私に希望を与えてくれる場所との出会いでした。

 

 

ドイツ語講座から得るものは語学だけではない

ベルリンにきて早3年目、色々(言い訳が)あってほとんど英語だけで生活してきた私ですが、昨年夏に会社を退職し、工房で(たまに店でも)仕事をするようになってからは本当にドイツ語の必要性が高まってきました。

今年の夏は特に色々あって精神的にも心機一転をよぎなくされることだらけでしたが、これもいいタイミング!と思い、ドイツ語を本格的に一から勉強しよう!と決意し、週2日、仕事後にイブニングコースに通い始めました。

クラスメイトも国籍が幅広く、イスラエル人、イギリス人、イタリア人、マレーシア人、アフガニスタン人などなど・・・講座に通わなければそれまでの生活の中ではなかなか知り合う事すらできなかったであろう人達とも知り合え、それぞれのお国柄も知ることができ、ドイツ語以外にも興味深いことは沢山あります。

先月末既存のコースが一区切りする最終レッスンの後、クラスメイトとバーに行った時のことです。

メンバーはイギリス人3人、イスラエル人2人、アフガニスタン、マレーシア、私(日本人)の8人。

アフガニスタンのイメージについて話していた時のことです。

 

アフガニスタン人: 「どうせみんなアフガニスタンといえば危険、行きたくないっていうイメージだよね?」

一同 : 「まぁ、そうだよね・・・(笑) 怖いっていうイメージは一番最初にくるよね・・・」

アフガニスタン人:「でも、みんなが思っているようなところじゃないんだよ!」

と言い出し、彼がベルリンにやってきた理由について話出しました。

彼は30代前半のアフガニスタン各地の劇場で人形を使用したプロのパフォーマーとして各地の劇場でパフォーマンスをして生活していたそうなのですが、あるとき、その劇場で公演中に自爆テロがあり多くの人が犠牲になったそうです。公演していた彼は幸い命に別状はなかったものの、奥さんも子供もいる彼はこんな事が自分の身に何度も起きるようでは命がいくつあっても足りないと、知人のツテでベルリンに逃げてきたとのことでした。

日々一緒に勉強している人の口から自爆テロの被害にあった話を聞かされるショックはもちろんのですが、私たち外国人にとってはアフガニスタン=最悪の治安、自爆テロなんて日常茶飯事の危険と隣り合わせの日々で娯楽など皆無の生活をしているイメージでしたが、彼がプロのパフォーマーとして生計を立てられるほど特に北部の都市では多くの人が劇場やレストランに足を運ぶことができるゆとりある生活を送れていることにまず驚きました。

すると、イスラエル人のクラスメイトの口からさらに、

「自爆テロね・・・私も15歳のとき現場に居合わせた経験があるよ。」という言葉。

彼女はまだ20代半ば。

「私は誰も殺したくないし、殺されたくないのに。」としみじみつぶやいていました。

最近特にシリア問題で難民が増加しているドイツですが、(彼らはシリア人難民ではありませんが)やはりこんなにも身近に自分の故郷で自爆テロが頻発し、そこにはいられないからもう帰りたくない、帰れないという人達がいるのだということを痛感しました。

彼らの話を聞いていて、悲しいやるせない気持ちになることはもちろんですが、日本にいたら、いや、ベルリンにいてもドイツ語講に通い始めて新しい人達と知り合う事をしていなかったら、こんな話も聞く機会はなかなかなかっただろうし、彼らの故郷の実態をこんなにも身近にとらえることはできなかっただろうと思います。

クラスでもなかなかマイペースなキャラクターで話をする時も、とてもソフトな印象を受けるやわらかい(リラックスした)雰囲気を持った彼の口から聞いた現状は悲しいものでしたが、同時に諸外国の人が抱いているアフガニスタンのイメージと彼の口から聞いた街の雰囲気はまさに彼のキャラクターのようなゆったりとした時間が流れているのだろうという印象を受けました。

いつか彼らが安心して故郷に帰ることを楽しみにできる日がくることを祈ります。

 

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はじめまして

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Photo @ Zionskirche in Mitte(ベルリンミッテ地区にあるZions教会にて)

はじめまして。ベルリンで革職人をしているShokoです。

2013年にひと夏の旅行のつもりで来たベルリンで就職、退職を経て現在、ベルリのオーダーメイドのベルトショップHoffnung Berlinの工房で1年ほど前から修行しつつ、オリジナルブランドShoko_Igetaでは上質な革を使用し手縫いのレザーグッズを販売しています。

アナログ人間の私にベルリン在住のイラストレーター高田ゲンキさんにサポートいただき、このブログをスタートすることができました。

このブログではShoko_Igetaの商品情報だけでなく、工房の様子や、ベルリン生活で感じた事、気づいたことなど色々シェアしていきたいと思っています。